税務調査の実態

課税を目的とする税務調査には、通常の任意調査と刑事に属する強制調査の査察とがあります。杜撰な帳簿の場合、青色申告担当者が記帳指導から着手し、事後調査の対象とされることもあります。
通常の任意調査は質問検査権に基づき、納税者の同意を得て行われますが、正当な理由なく拒否すると罰則があります。つまり、実質的に任意調査でないことを理解することも必要です。
税法は通達で援用しても完璧でなく、税務署の裁量権も大きいため微妙なグレーゾーンがあります。そのため、通例は税務署と見解の相違として意識的な脱税行為を否認し、指導に従い修正申告します。
裁判所の提訴費用と時間、個人所得の調査波及やイメージ低下などを考えれば、多大な負担を覚悟せざるを得ず、しかも、グレーゾーンは全面勝訴が困難だからです。
ところで、納税協力団体である青色申告会や法人会などの役員を熱心に務める人が見受けられます。何かを期待する人もいるようですが、調査に入れば脱税行為の全部を見逃すことはありません。
調査の事実自体が恥になりますから優良納税者の自信がなければ、役を引き受けるべきではないのです。税務調査の実効対策は不当な言動を監視し、納税者の誤解や錯誤につけ込まれないような防止対策を中心とすべきなのです。

税務調査の質問調査権

税務調査時の質問検査権は所得税法で「国税庁、国税局又は税務署の当該職員は所得税に関する調査について必要があるときは、その者に質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類及びその他の物件を検査することができる」とされています。
質問検査権は強要できないのですが、拒否すれば、余計に疑われ調査が長引くだけでなく、「当該職員の質問に対し答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ若しくは忌避した者は1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」との罰則があります。

応対時の基本姿勢

質問検査権を行使する署員に対しては、身分証明書を納税者に提示する義務があるので記録しておくことが大切です。問題となり得る言動があった場合は署員が1人のときは後でも特定できますが、2人の場合はお互いが庇い合うこともあるからです。
例えば、勝手にタンスや机の引出しを開けたり、パソコンの起動も許されず、プライバシーに関わる場合が多い寝室などの部屋に入るのも同意を得なければなりません。
反面、最初から非協力的な態度を示すのもよくありません。否応なく署員と人間関係が始まるので、最低限の挨拶は最初にするのが好印象に繋がります。
大多数の署員は最初から権力を最大限に行使し、徹底的に調査する目的で来ているわけではなく、納税者の誤りを自主的に修正申告してもらうことが、本来の目的なので指導に主眼を置いています。
署員も常に不安や忍耐、時には恐怖を感じる調査を経験しています。明確な嫌悪や拒否の感情がなければ、それだけでホッとしている場合が多いのです。名刺と一緒に笑顔で「経営者の○と申します、宜しくお願いします」と挨拶をします。
その後は、お店の概況や商品などの説明を通じ、打ち解けた会話ができるようになれば十分です。署員の話しを聞く際は体を少し前に傾け、身を乗り出す格好で真摯に聞く姿勢を示し、署員が話しやすいよう、メモは最小限に留めるなどの配慮も必要です。
担当者に何が必要で何を提出すればよいかを聞き、必要最小範囲で積極的に協力することが大切です。提出物に非協力であれば、不審感を抱き、その非協力的な原因を探るのも調査の重要なポイントになるからです。
所得漏れの結果が同じでも意識的か知識不足によるものかでは事後の対応が違います。記帳に自信がないとか、帳票類の整理ができてないなどは最初に話すべきです。
ネットショップの場合は現金に直接触れる必要がなく、レジスターを設置しないのが普通です。口座通帳がレジ記録紙に相当するので、口座管理は特に重要です。
全口座の開示を要求されないためには、説明を補強できる注文メールや入金確認を兼ねたサンキューメールを別ファイルにしたり、宅配業者の出荷伝票などを最長7年間保存する必要があります。
注文先や発送先、入金先の経路に不審な点があれば、売上金の漏れをチェックしますので、お客様の利便性に配慮して口座数を必要以上に増やさないことが大切です。
また、これらの入金状況を確認するため、最終的に家族全員の預金口座の開示を必要とされる場合があります。多額の定期預金は総合口座内に全てを入れず、なるべく証書として保管するのが望ましいでしょう。

税務調査の留意点

税務調査の選定

近年は減少傾向にある税務調査の全国的な実地調査率は毎年申告者全体の1%位になっています。確率は極めて低いのですが、個人事業者は通常3年毎に対象とされ、過去3年分を遡って調査されます。
さらに、申告に不審や特定業種、前回調査で修正や不備のある事業者は再調査される傾向にあります。つまり、毎年調査があるのと同じ結果になり得ると言うことです。
電子商取引の対応として平成12年2月以降、電子商取引専門調査チームを全国の11国税局に配置し、電子商取引事業者などに関する情報を専門的に収集し、収集した情報に基づいて税務調査を行うなど、日々ネットショップの動向を監視しています。
ネットオークションやオンラインモールに出店するネット通販店は運営者に協力を依頼することもあります。例え趣味や小遣稼ぎが動機であっても、売上から仕入と経費を控除した残額が20万円以上になれば、給与所得と合算した確定申告が必要です。
自ら実際に売買しないアフィリエイトやドロップシッピングで得た紹介手数料なども同様ですので、特に疑念を抱かれないよう次の点に注意する必要があります。

  • ユーザーIDの複数登録や削除を短期で繰り返す
    単に悪い評価が出たから削除では故意と疑われる。
  • 口座を必要以上に開設する
    例えば、商品と客層に関連のない農協や漁協などに口座を開設している。
  • 代金決済に商品券や切手などの金券を歓迎する
    金券ショップで換金すると現金売上と同じである。
  • ページビューのカウントが異状に増加する
    アクセス解析ツールを利用し、カウンター表示はしない。
  • 商品掲載ページの更新頻度が高い
    サイトのページ更新日時は簡単に把握できます。

調査の対象となる事業者が同業同規模事業者の上位グループに入る多額納税者であれば、数十年間調査がないこともあります。このような事業者は優良納税者であり、優良青色申告者として税務署長から表彰されることがあります。
一方、総務省の家計調査に基づく標準生計費から所得の少ない個人事業者を選定する場合もあります。例えば、広島市の4人世帯の40歳台であれば、年間約326万円の生活費が必要なので、利益もそれ位はあるはずとされるわけです。
これは、儲けのある事業者ばかりでなく、実質的な借金生活の人も多いので誘導的に利用されます。ただし、借金が少ないと、どう生活しているのかなど調査と直接関係ないことを聞かれることもあります。

所得の実態

広島国税局管内広島県の平成19年度統計調査結果の営業等所得の申告納税者を所得階級別にみると、300万円以下の事業者が過半の62.6%を占めます。

営業等所得額 申告納税者 構成比率 累積構成比
100万円以下 4,404人 11.5% 11.5%
100万円超200万円以下 10,363人 27.2% 38.7%
200万円超300万円以下 9,117人 23.9% 62.6%
300万円超400万円以下 5,563人 14.6% 77.2%
400万円超500万円以下 2,991人 7.8% 85.0%
500万円超700万円以下 2,559人 6.7% 91.7%
700万円超1,000万円以下 1,151人 3.0% 94.7%
1,000万円超 2,009人 5.3% 100.0%
合 計 38,157人 100%

帳簿は信用されない

税務署は否認事項のない事業者に無理やり追徴することはありませんが、全く否認事項のないことも、あり得ないと考えています。税理士も税務署OBが多く、税理士に対する税務署の感情的なしこりから6年6ヵ月に及ぶ長期裁判の原因となった飯塚会計事務所事件もあって税務署に遠慮がちです。
意図的な所得隠しは論外としても元々帳簿類を信用していないので、税務署がその気になれば、必ず否認事項を指摘することができます。ただ、課税の公平性の建前から恣意的に指摘できないだけで、事業者は最初から結果的に優遇されているのです。
個人事業者は特に売上と仕入、棚卸が調査のポイントなので、これらの意図的な除外や水増しは大変悪質とされます。接待交際費の内容も飲食と営業効果との関連性が争点になります。
日々、正確に記帳し、現金残高を確認していても家事関連費を正確に把握しなければならないのであれば、支出額の○%を経費に算入するなどの曖昧さは許されないはずです。
例えば、自販機の売上金は信用できません。この売上金は営業日の一定時間に回収し、レジ打ちしなければならないのですが、自販機売上として別勘定で記帳する義務はなく、通常の売上金で処理されます。
一部を抜き取っても店内の通常価格より高く、飲料の粗利益率が極端に低下しなければ判別不能です。鍵の管理を含め、理路整然と説明できる必要があります。
また、法人の場合、企業規模に係わらず社用車として高級外車を購入することが少なくありませんが、継続的な法人所得があれば、業種に不必要な高級スポーツカーさえ減価償却資産として認められる例もあります。
本来、全国一律であるべき税務署の見解や判断が地域性、永年の慣習、関係団体とのしがらみなどから、地域税務署によって異なる場合があり、税務署長の広い裁量権で決定されているのが実態です。

調査の応対

署員は調査のプロなので雑談や態度、性格や心理状態から隠し事を見抜くことがあります。このことは署員のその後の態度や調査手法に大きな影響を及ぼしますが、必要以上に緊張し、避けたり、饒舌にならず、堂々とした態度をとることが大切です。
録音やビデオ録画は署員に心理的な圧力となって建前論に終始し、交渉が進展しないことがあります。このような隠し撮りが分った場合は心証を悪くし、その後の交渉にしこりや不信感を残すことになります。
これらの行動は厳に慎むべきですが、法律的には、税務調査時の録音は禁じられてはいません。自分が立ち会わない場所に録音機器をしかけて録音すれば、それは「盗聴」であり、違法行為となるの対し、自身がその場所に同席する場合の録音は「記録」であって「盗聴」となるわけではありませんが、やはり心証は悪くなります。もちろん、メモは自由なので、指導や説明された点は必ず記録することが必要です。署員が帳簿や証票類を持ち帰りたい旨の申し出がある場合は帳簿名を記した預り書が発行されます。
業務に支障がなければ、これらに協力することで印象もよくなりますが、記帳担当者が家族である場合は税務署を感情的に煙たがる事業主が多いようです。
署員との応対をご家族に任せる場合がありますが、例え説明できなくても署員の緊張状態が違いますので、同席をお奨めします。調査日時や場所の変更は極端でない限り、認められますので遠慮の必要はありません。
税務調査の結果、申告内容に誤りのない場合は調査が終了した旨の書面が送付されますが、修正申告には至らない指導事項があれば、内容説明も記載されています。

反面調査

調査の一環として対象事業者の取引先や銀行に事実確認する反面調査が行われる場合がありますが、この調査は調査対象事業者の帳簿などで十分な結果を得られない場合に限られています。
規定の帳簿類がない場合や帳簿の内容が不明瞭かつ不正確な場合などが該当しますので、取引先との関係悪化懸念を理由に調査を拒むのは無理と考えるべきです。

調査の事前通知

税務署は通常、対象事業所の約80%前後に相当する納税者及び関与税理士に調査を行う旨を事前に電話で通知し、日程調整を行いますが、「有効な調査の妨げ」となる場合は事前通知なしで調査することがあります。
事業者が事前通知を受けることで帳簿書類を隠したり、改竄される懸念がある場合などがこれに該当します。
過去の税務調査状況や取引先の資料収集で不審があり税務署が相当の証拠を把握している場合に行いますので、税務署が認める正当事由がない限り、これを拒むことは無理と考えるべきでしょう。

調査の立会人

署員の指摘に対し、意見陳述できる人は代表者、従業員、関与税理士などの直接的関係者に限られます。関与税理士のいない場合は不当言動を監視する目的で信頼できる第三者の立会いを求めることも重要です。税務に関する助言は認められませんが、精神的にも心強く余裕が生まれます。

推計課税

記帳不備の場合は通帳、領収書、請求書などの基礎資料で申告書作成の過程を説明するしかありませんが、これでは税務署が納得するはずがありません。このような記帳不備は青色申告の取消しもあり、税法上の各種特典が受けられなくなります。
記帳がなく、帳簿を提示しない場合は推計課税しか方法がなく、こうなると重加算税、青色申告の取消し、取引先の反面調査、3年後の無通知調査の覚悟が必要です。

禁じ手

次のような行為は公務執行妨害や脅迫、贈賄、強要などの罪に問われることがあります。本当は税務署員も随分と怖い目に遭っていますので、高圧的な署員でなければ協力するのが得策です。署員と信頼関係を築ければ、逆にアドバイスを受けられ、次回の確定申告に活用することができるからです。

  • 署員の住所や家族構成を調べ話題とすること
  • 署員が金銭や物品を盗んだかのように仮装すること
  • 署員がセクハラしたかのように仮装すること
  • 署員に多寡を問わず金銭、物品、経済的便益を提供すること
  • 必要以上の音声や照明などで無形の圧力を加えること
  • 暴力的な態度や表現で威圧すること
  • 必要以上の人数で取り囲み威圧すること

修正申告と更正処分

調査終了後に問題があれば、署名押印だけで済むよう事前に修正申告書が作成される場合もあります。税務署の指導に納得がいかなければ、修正申告の必要はありませんが、この場合は税務署で更正処分し納税額を決定することになります。
税務署が修正申告を勧め、指摘事項を譲歩しつつ応ずるよう説得や青色申告取消しを示唆することがあります。更正となると税務署側に立証責任があるので、調査のやり直しもあります。税務署が修正申告にこだわるのは、次のような利点と手間が必要となるからです。

  • 修正申告を一度提出すると異議申立てや国税不服審判所へ審査請求できない
  • 青色申告者の更正処分は更正理由を付記して納税者に通知しなければならない
    更正理由は裏付け調査に基づく裁判に耐え得る綿密な資料が必要とされます。

更正処分が例年以上に増加すれば、上司の指導管理能力が疑われ昇進に影響しかねない面もあります。ただし、帳簿書類の提示がなく、調査に非協力であるため推計により所得を計算せざるを得ない場合は青色申告を先に取り消し、その後に更正処分する荒業があります。

追徴税額の納付

修正申告書の提出と同時に追納する本税は一括納付の必要があり、更正処分の過少申告加算税や後日請求の延滞税を含めると納付が困難になることがあります。
税務署の管理徴収部門に相談することで、分割払いも可能ですが、一般的に延滞税は高利であることや経費にならないなどの理由から借入金で一括払いする場合が多いようです。納税資金は運転資金に該当する対象事由なので、日本政策金融公庫へのお申し込みも可能です。

納税者支援調整官制度

国税庁には、平成13年6月から全国の国税局や主要な税務署(県内は広島国税局と広島北税務署、福山税務署)に納税者の苦情を受け付ける「納税者支援調整官」が設置されています。
納税者支援調整官は税務職員の応対や調査の仕方など税務行政全般について、納税者からの不満、注文、批判などの苦情や相談を原則3日以内に納税者の視点に立って処理されます。
税務当局から独立した第三者機関ではなく、強制調整権限もありませんが、税務調査での不法行為や滞納者に対する過度な徴収などに一定の抑止力が期待できます。


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