資金調達の着眼点

創業時の融資は金融機関にとってリスクが大きく、金額の割りに非効率なので積極的ではありません。確定の決算書に基づく事業報告書ではなく、事業計画の適否審査なので、関連資料を基に作成される事業計画書は論理的な矛盾のないことが当然の前提条件あり、資金調達ナビなどの活用により周到な準備が必要です。
事業計画書は創業者との面談の中で人柄や熱意、実現性を伝えるツールに過ぎず、創業資金の貸付は人物評価と経歴が重視されますので、十分な説明や説得のできない人は商売に不適であると思われます。
一般に資金の調達手段が限られる小企業は擬似資本と呼ばれる借替を前提とした実質的な長期運転資金である資本金的な性格の資金が債務の形で調達されています。
企業規模の小さい場合はこの擬似資本の割合が高く、借替が資金調達先の金融機関の事情によって左右されるため、事業継続の不安定要素になることを意味します。
経済情勢の不安定な現在は単に担保や保証人があれば、容易に融資が受けられるわけではなく、科学的な分析手法に基づく信用格付が重視されますので、金融審査マニュアルに示される債務者区分の正常先となるべく日々の努力が大切です。

資本性借入金

金融機関が企業の財務状況等を判断する際に、負債ではなく、資本とみなせる借入金を資本性借入金と言い、DDSすることで、財務内容の改善を図ることができます。

  • 要件
    1. 償還条件は5年超の一括償還(長期の据置期間)とする
    2. 金利設定は業績連動型が原則であり、事務コスト相当程度の設定も可能とする
    3. 担保付債務を変更する場合、劣後性は必ずしも担保の解除を要しない
  • 利点
    1. 長期の期限一括償還が基本となるため、資金繰りが楽になる
    2. 業績連動型の金利設定が基本となるため、業況悪化時は金利が低くなる

日本政策金融公庫は創業・新事業展開・事業再生などに取組む事業者の財務体質強化を図るため、期限一括払いの「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」を取り扱っています。
自己資本の充実や正確な財務諸表の作成と資金調達の多様化が不可欠ですが、融資の検討項目などに利用される業種別貸出審査事典(全8巻)は業種ごとに特色動向の項目があります。
業界に関する一般知識を得ることもできますので、ご自分の業種を広島市立中央図書館などで一度ご覧になることをお奨めします。

融資審査の基礎情報

定量情報

決算書などの財務諸表から算出される指標比率を定量情報と言います。各金融機関は客観的な比較審査ができるよう、これらの評価方法を統一しています。
【一般例】

  1. 不渡手形や1年以上未回収の売掛金は評価しない
  2. 商品のデッドストックは処分可能額で評価する
  3. 土地は公示地価で評価する
  4. 運転資金=現金預金+売掛債権+棚卸資産-買掛債務で算出する
  5. 設備投資の採算判断

    回収期間=長期借入金÷営業活動キャシュフロー

  6. 減価償却資産の減価償却費が計上されていない場合は算出額を控除して評価する
  7. 有利子負債残高償還年数(債務償還年数)=有利子負債残高÷キャッシュフロー
    ①有利子負債残高=短期借入金+長期借入金+社債など(役員借入は含まない)
    ②キャッシュフロー(法人)=経常利益×50%+減価償却費
    ③キャッシュフロー(個人)=差引金額所得+減価償却費-最低限の生活費

金融機関の独自基準に対し、中小企業基盤整備機構の運営する経営自己診断システムの利用で業界内での各財務指標値の優劣や収益性、効率性、生産性、安全性、成長性の5項目についての状態を自主点検できます。
多くの金融機関や信用保証協会は中小企業信用リスク情報データベースを利用した診断システムを構築し、融資の審査に利用しますが、特徴は次のとおりです。

  • システムは中小企業庁の主導で、中小企業金融の円滑化を図る目的で開発されたCRDに蓄積されている約100万社の中小企業の財務データを用いて構築されている。
  • システムに自社の決算情報を入力するとCRDに蓄積された同業他社の大量データと比較できる。業界内で自社の各財務指標値の優劣を点検することができ、収益性、効率性、生産性、安全性、成長性の5項目についての経営状態を点検できる。
  • 安全性指標を抽出し、同業種デフォルト企業との比較で経営危険度も点検できる。

また、日本政策金融公庫の財務診断コーナーで数値データを決算書に入力すると、財務指標の推移や業界平均値(小企業の経営指標)とのデータ比較ができます。

定性情報

財務諸表のように数値化することのできない情報を指します。
【一般例】

  1. 事業主の経営能力、性格、事業意欲、健康、家庭状況など
  2. 組織体制や従業員の従業態度、志気、定着状況など
  3. 取扱商品の競争力や営業形態の状況など
  4. 業界環境や業界内の位置状況など
  5. 経理の記帳や金銭管理の状況など

【知的資産経営報告書】
企業価値を生産する経済的な価値ある無形の経営資源ですが、貸借対照表の資産の部に掲載されない金銭評価できない無形資産です。具体的には、財務諸表に企業が所有する目に見えない技術、技能、組織力、ノウハウやブランド、特許などの知的財産を含む知的資産を指します。
これらを評価することで、企業価値を明確にする報告書を知的資産経営報告書と言い、作成を支援するガイドブックは知恵の経営報告書作成ガイドブックなどが公表されています。
企業の存続と発展にとってステークホルダーに企業の優れた部分を知っていただくことは重要であり、これらを作成、公開することで企業の正確な価値を周知することができます。

融資決定の要因

個人の信用力

個人の信用力を審査する場合は3Cと呼ばれるクレジットカードの与信に準じた最低限の基準でランク付けされるため、正しく説明できるよう事前の準備が必要です。

  • Capacity  返済できる経常的な収入があるか
  • Character 返済する意思があるか
  • Capital   万一の場合、返済原資となる資産や担保があるか

企業の信用力

一般に金融機関は信用格付の内容を企業側に開示することはありません。希望すれば格付を示される場合もありますが、実際は予想以上の低評価に驚くことになります。
決算書のデータから得られる各種財務分析比率は金融機関ごとに重視項目が異なり、一律的ではありませんが、スコアリングに大きく影響するのが一般的です。
融資を断る場合でも理由は明確に言わないことが慣例です。断る理由の説明不足で誤解された場合にトラブル発生や貸出しを強要される心配があるからです。
実際、説明したばかりに理由に根拠がない、不当差別で訴えるなどと逆手に取られる場合もあります。このことは融資の可否がわかりにくい要因のひとつに挙げられます。
数値や人物に特に問題がなくても借入金の保証人であれば、減点されることがあります。日頃の対策に貸付制度がある小規模企業共済中小企業倒産防止共済制度は掛金に制限があるものの、節税やリスク対策に効果大なので、加入をお奨めします。

金融機関の基本方針

  • 融資審査は稟議制
    融資担当者の案件は直属上司、支店長へと稟議書を添付して決済を受けます。
    そのため、担当者が稟議に上げやすい簡潔にまとめた資料作成が効果的です。
    ポイントは投資(融資)効果とキャッシュフローの向上を連動させることにあります。運転資金の借入であってもキャッシュフローと結びつけた説明が不可欠です。
  • 業績の良い企業には、基準金利より低金利で融資
    業績の悪い企業は基準金利にリスク料が付加され高金利になります。
  • 融資担当者は一定期間で転勤移動
    企業との癒着、しがらみ、義理人情などの私情が入らぬように転勤があります。
    担当者とそりが合わない場合は一時の感情で取引解消を考えず、足が遠のき疎遠にならぬよう2~3年先を見据えることが大切です。

意思の疎通

円滑な融資は金融機関との信頼関係を日頃から形成する努力が必要です。特にプロパー融資の決定はケースバイケースで判断せざるを得ない面があるため、情報の非対称性を解消する金融機関との意思疎通は信頼感の醸成に不可欠です。
経営情報は経営者自ら積極的に説明する必要があります。例え、決算内容が悪くてもどのような改善方法でどう努力しているのか、将来の見通しはどうなのかなどが分かれば、リスクの程度を把握できますので、検討される可能性もあります。
小規模事業者は銀行対企業の信頼関係から銀行対個人の信頼関係がより重視されます。返済は実質的に企業ではなく、代表者個人の強い意思によるからです。

資料

通常は税務署受理印のある確定申告書の控や財務諸表、直近の資金繰表、試算表などが求められます。中には故意に水増し所得を期限内申告し、融資決定後に更正の請求をする詐欺紛いの行為をする人もいるようです。
また、法人の減価償却は任意償却であることから、本来の償却を繰り延べ、減価償却費を計上しないで、黒字化や利益を粉飾するなどの行為は意味がありません。
多くの小規模企業は日々の記帳に問題があるので、これらの提出物が全て信用される訳でありません。逆に、記帳不備の所得漏れがあり、実態は数値以上に余裕があるものと見られることさえあります。
特に飲食業やサービス業などの現金商売の場合、その傾向が強いようです。例えば、所得から通常の生活費と返済額を差し引くと少し赤字になる場合がありますが、この場合は同居家族に安定的な別収入があれば融資可能になることがあります。
税理士事務所に委託した場合は全面的に信用されるわけではありませんが、多少の効果は期待できます。それは金融機関の内部審査で外部の第三者である税理士に権威付けられた書類であるという客観的事実が評価されるからです。
自分で作成した事業計画書も根拠に基づく説明があれば、十分評価の対象になります。これらは案件審査過程で最も時間を要する案件の取り纏めと稟議書の作成に利用できるからです。
なお、有力者の紹介や名前を出す行為は圧力と受け取られ、逆に信用不安があると思われ不利になります。公的金融機関では、特に嫌われる行為なので慎むべきです。面談時に萎縮効果を狙って聞かれもしないことを話すことも厳禁です。

説明

いくら融資を受けられるかが、関心の的になる場合が多いようです。毎月いくらなら返済可能か、返済原資と融資効果を説得できるよう考えるべきです。設備資金の場合は投資計画と経費や売上への波及効果を予測計画書に添付することをお薦めします。
そうすることで、貸付担当者に好印象を持ってもらうことが可能です。このように信用度は数値的に計測できるものとできないものとがありますので、これらを総合して融資の判断をする金融機関の立場になって考えてみることが大切です。

事業の永続性

毎月の返済を確実に実行するには、事業から生み出される継続的な収益が必要です。本業たる事業が投機性を帯びたり、一過性のブームに乗った思惑的なものがあります。このような永続性に疑念が生じる場合は金融機関の不安感を増大させることになりますので、新事業の立ち上げ資金の借入れには、綿密な計画書の提出と十分な説明が必要です。

事業の収益性

返済原資の収益が低い場合、融資による確実な業績向上が見込まれない限り、通常は不可とされます。事業収益は損益計算書で分析され、実質収益は減価償却費に専従者給与を含めたもので評価されます。
特に個人事業の場合はローンや仕送金を含め生活費優先で流出するため、これらの控除後が返済余力になります。つまり、同じ収益でも家庭の事情により返済余力が異なり、返済能力に格差が生じることになります。
金融機関は家庭事情をプライバシーの問題もあり、詳しく聞くことはありませんが、確定申告書の各種控除欄の記載内容や金額である程度の把握は可能なので、大学などの学生がいれば、学費や生活費をどう工面したのかを積極的に話すべきでしょう。

事業の安定性

安定性には、貸借対照表から分析される経営内容と営業形態とがあります。経営内容は資産と負債の均衡や借入金の内訳が重視されます。営業形態は商品や取引先、店舗状況、従業員の就業態度、代表者の健康と家庭環境などが観察されます。
特に、小規模事業者は人的信用評価が重要視されます。これらは、プライバシーに属する面もありますが、積極的な開示で好印象を持たれることが必要です。

申し込み時の留意事項

資金使途

資金の使途には、大別して運転資金と設備資金とがあります。前者は必要な理由や金額の根拠に乏しいため、申込額の減額を見越し、水増しする実態があります。程度を超えるようなことは決して好ましいことではなく不信の基になります。
また、季節資金や一時的な仕入資金など本来は売上代金の回収で返済すべき性格の短期資金を利益と減価償却費で返済する長期資金として調達した場合は運転資金に余裕が生じますが、勘違いして投資、減価償却資産の購入、配当などに資金流出すると資金繰りの悪化に直結します。
このような勘違いは借入金の使途を明確にせず、利益の回収期間を誤認したことから生じます。

融資制度

公的融資制度には、それぞれ融資の対象者、限度額、期間、金利、保証などの諸条件があり、手続きの手間や実行日までの日数を併せ考慮した場合に一長一短があります。
そのため、利用可能な融資制度と条件のどこにポイントおくかチェックしておきます。金融機関系のクイックローンは信販系と比べ、低利で書類提出後2~3日内に融資の可否がわかります。

融資申込書

家族の方が代書することは、本人の了解を得た上とは言え好ましくはありません。金銭消費貸借契約書の法的効果のある書類などでなくても自筆記入で責任を自覚するべきです。
住所、氏名、生年月日、借入希望額程度は最低限でも自書することが必要です。融資後のトラブル防止のため、申込書と契約書の署名をチェックされることもあります。

保証人

一般に保証人は連帯保証人を意味し、本人に代わって即刻、全額、無条件で弁済する契約義務を負います。万一の場合には、このような義務に耐え得る要件を備えた方が必要です。
ただし、連帯保証人になった日から財産隠しに走り、例えば不動産は家族に名義変更し、定期性預金は全額引き出し、金銭的な価値あるものは隠匿し、更には偽装離婚したりするなど、考えつくあらゆる方法で財産を隠匿する場合もあります。
差押えられるものがなければ怖いものなしですから、あとは自己破産して終わりというわけです。代位弁済時に隠匿財産があれば、不法行為になる一方で当初から贈与税の非課税枠を利用するなどの行為はモラル的にはどうかと思いますが、これらの行為は合法です。
従って、保証人には金銭に換算できる定量的な信用以上に金銭に換算できない人柄、健康などの定性的な信用が求められています。

個人信用情報

金融機関は経営者の信用を客観的に判断するため、個人信用情報機関を利用することもあります。信用情報とは借入目的や債務残高、クレジットカードの保有状況、限度額、返済状況などが含まれ、滞納があれば日本信用情報機構全国銀行個人信用情報センターシー・アイ・シーの情報機関は相互に個人信用情報の相互ネットワークCRINを利用して信用情報を照会しています。
特に個人の場合は3カ月以上の滞納は完済後5年間はデータベースにこの情報が登録されていますので、クレジットのご利用に慎重さが望まれます。

経営者保証

経営者の個人保証について、次のような経営者保証に関するガイドラインを定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や早期事業再生などを応援しています。
(1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと。
(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費など(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること。
(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること。
なお、第三者保証人についても、上記(2)および(3)については経営者本人と同様の取扱となります。

返済方式別の計算例

借入金返済原資の簡易シュミレーション

税引後当期純利益(1) 万円 既往借入金年間返済元金(4) 万円
年間減価償却費(2) 万円 新規借入金返済原資(3)-(4)=(5) 万円
返済原資計(1)+(2)=(3) 万円 返済計画年数(6)
新規借入可能額(5)×(6) 万円

これ以上の借入は資金繰りに影響を及ぼすので、役員報酬の減額、役員等の借受金などの他、最終的に返済月額元金の減額要請することにもなりかねません。

借入金返済簡易シュミレーション

借入金額 円 (「,」不要)
返済期間 月 (毎月1回返済)
年利率 % (小数点以下入力有効)
以上の数値データを  
元金均等返済総額   元利均等返済総額

■1ヶ月を365日÷12月の平均日数で計算し、休日も考慮していないため差があります。

関数電卓や表計算ソフトのエクセルなどを利用すると公式から容易に算出できますが、通常の返済方式である元金均等返済の場合は覚えやすいので役立つこともあります。

本格的な月々の償還表はExcelのマクロ機能を利用し、返済日の休日調整ができるローン返済シュミレーションで作成することができます。

               A  (n+1)×n   r
■元金均等返済の利息算式=──×──────×──
               n    2     100

                A×r/100
■元利均等返済の利息算式=──────── - A
               1-(1+r/100)-n

A=借入金額
n=返済回数
R=年利率
r=月利率(R/12)


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