商いの心得

商いとは、お客様を飽きさせず、自身の日常業務に飽きぬよう精進することであると言われ、心身健康な体と感謝の気持ちを保持して永続的に商売することは並大抵でないことを意味します。
人は夢が叶うとそれが日常で、当然のことだと認識し、意欲の源泉である目的を喪失するようになります。開業当初のモチベーションを維持するには、確固たる強い経営理念を必要とします。
これらの経営哲学は仏教の倫理観に基づくものが多く、近江商人や松阪、伊勢、大阪商人などの家訓として代々継承されています。つまり、単なるお金儲けだけを目的とする考え方は理念ではありません。
相手があって初めてお金儲けができるので、そこには感謝の気持ちがなければ永くは続きません。この感謝の気持ちをどう表現し、具現化するかが問われます。
近江商人には、利益の一部を還元する出精金と言う配当制度があります。例えば、見積内訳の積算段階で115万円になったとき、単なる値引きではなく、出精金10万円という書き方で控除し、見積書の合計額を105万円とする場合です。
この場合の出精金はお客様に精を出して「頑張って値引きしましたので、これ以上の値引きには、お応えしかねます」との意味が込められていると思いますが、一見のお客様への出精値引きは明らかに誤った用法と言えますし、例え得意先であっても毎回のように用いることも失礼だと考えるべきでしょう。
元々は「得意先に日頃のご愛顧に感謝し、利益の一部を今回はご報恩の意を込めて特にお返しさせていただきます」を意味するものなので、出精値引きを値引きと同意語に使うべきではありません。

商人の生活実態

自営業は時間やお金が自由になると思う人もいますが、実際はお客様の目もあって安易にお店を離れられず、お店の経営に余裕があっても旅行や高級車を買うことすら気兼ねする人も多いのです。
商売である以上、全て自己責任で仕事と生活の一体化を覚悟しなければならず、お客様や取引先の都合を最優先し、完全休日もなく、私生活は後回しになります。
商いは忍耐以外に羞恥心や自尊心を捨て、違法性の認識を問わずギリギリの脱法行為をする場合があります。法は遵守しなければなりませんが、制定趣旨までも遵守しなければならないわけではありません。
特に開業当初は家庭不和の元になる経済基盤が脆弱で、ご家族の協力や理解が絶対に欠かせず、ご自身と家族の生存権は緊急避難や急迫不正行為に対する正当防衛のように法を超越する位の覚悟が必要です。
お客様のお蔭で生活できるのであれば、感謝の気持ちは大切ですが、最低限の生活すらできないのであれば、ご家族を守るための脱法的な行動や小さなウソをつく行為は決して恥ずべきことではありません。商品によって掛値を10倍にしたり、値引きの駆け引きも平然と笑顔で応対できる度量が必要です。
予想以上に儲かった場合は溜め込んだり、散財したりすると後々後悔することになります。儲けはお客様への利益還元に使うべきで、その行為こそがウソを本当や誠実さに転換できるのです。
ただし、あなたの常識が世間常識の閾値を超えたとたん、一挙に信用を失うことになるので、世間の常識と余り乖離しないよう、人の意見を努めて聴く謙虚な心構えが必要です。

商人のタイプ

起業には、一般に背景となる強固な動機(強欲)を必要とします。お金に執着し、欲を剥き出し、人を押しのける気迫と根性がなければ、人並み以上の成功は望めません。
脆弱な動機による事業経営は必ず破綻し、関係者に経済的、精神的な多大の負担をかけることになります。建前や体裁とは別に強固な動機の具体例は次のとおりです。

  • 金銭的な欲求が強い人
  • 人を支配する権力の欲求が強い人
  • 自己の夢を実現する自己発現の欲求が強い人
  • 社会(人)とのふれあいや喜びを共感したい欲求の強い人

商人は笑顔の絶えない”笑人”や自らお客様を喜ばせるショーマンの”ショー人”とも言われます。これらを兼備した響きのある”あきんど”は年中無休で1日の過半を業務に費やしてもストレスは溜まらず、逆にお金やお客様が自然と貯まるようになります。
真の商人とは、自らお客様との会話や業務を楽しむ余裕を持ち、”喜怒哀楽”の感情の顧客に満足を超える”喜と楽”を笑顔で提供できるのが”あきんど”です。
換言すれば、商品と金銭の交換だけでなく、お客様との感謝の情を交換できるかどうかが大切なので、是非とも商品に感謝の情を添えてのご提供を心掛け、いつの日か、ご贔屓やご支援と言う形のブーメラン効果があると信じてください。
人柄と個性で顧客を魅了する商人はビジネスマンと違い独特の感性や行動様式、生活価値観を必要とし、これらに順応できないと長続きしないのです。
関西圏以外でちょっと退かれる心配のある強烈な浪速のあきんどイメージの「のぶちゃんマン」や呉市域に販路が限定されていたがんすを広島市域の地場スーパーで試食販売する「がんす娘」も女性目線で開発した独自レシピを公開し、自身を広告塔にパーフォマンスと特異なキャラクターで販路拡大に活躍しています。

商人の条件

チャレンジ精神が旺盛で前向きである

「幸運の女神は後ろ髪がない」と言われる格言がありますが、明日の保証がない開業当初は一瞬のチャンスを見逃さないことが起業の成功を左右します。本来、チャンスは誰にでも平等にあるのですが、運がいいと言われる人は確かに存在します。
だからと言って運を天に任すだけでなく、継続的な努力が必要で「天は自ら助くる者を助く」と言う格言もあります。努力の方法は前向きなポジティブ思考と行動習慣によってのみ、運は好転すると提唱するワイズマンの四つの法則が有名です。

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人が好きで笑顔がすぐ出る

笑顔はお客様に対する最高の無料無形のサービス、見えない包装紙と言われます。この笑顔で満足感と幸福感に包まれるわけですから商人の必須条件と言えます。人が好きであれば自然と会話が多くなり、相手の気持ちを察知できるようになります。
よく言われる”話上手より聴き上手”の聴くには、忍耐と素直と従順が求められ、相手への思いやりを意味しますが、対話能力とは、会話のキャッチボールを相手方に合わせることを意味し、雑談力が不可欠です。
尊敬語や謙譲語の正しい知識はあってもむやみに使うべきではありません。国語能力や言葉使いの乱れもあって一般社会では、これらの意味を正確に理解している人は少数派です。そのことで小馬鹿にされたと思う人も多く存在しますので、相手を観察しながら臨機応変に対処し、不愉快な思いをさせないことが大切なのです。特に初めての来店客には、心に余裕がないと真の笑顔や思いやり、気配りなどはできないものです。
一方、口ベタの人やいい加減なのに何となく憎めないタイプの人も存在します。このタイプの共通点はトビきりの笑顔を持っていると言うことです。笑顔には、何も言わなくても緊張感を解き、不安感を吹き飛ばす絶大な効果があります。

相手の目線に合わせる

お客様には、当然いろんな価値基準を持った方がいます。目線とは、商品本体と商品の使用環境についてお客様の立場から考えることができるかを意味します。購入後のお手入れや将来のこと、使い勝手、機能など検討すべきことがたくさんあります。
お客様にとっての”お得感”は価格優先だけでなく、同等の価値判断ができるよう努力を必要とします。プロとして適正なアドバイスは必要ですが、決して押し付けがましくしないことが大切です。

金銭感覚に敏感である

お店のお金と生活費を区分管理するには、簿記の仕組みを理解する必要があります。資格取得が目的でないので、勘定科目の意味が理解できれば十分です。最初から分かる人に丸投げしたり、いきなり会計ソフトを利用するようでは失格です。
この瞬間にも資金繰りで地獄の苦しみに耐えている人が大勢いることを自覚し、経営結果が直ちに反映する資金繰りは経営者が避けて通れない試練と覚悟すべきです。
お金が商品、経費、備品等に転じる過程や商品在庫と利益の関係を理解することは極めて実利的です。そのため、最低限の知識習得は経営者の務めと言えます。費用と損失の見極めができれば、お金の支出に迷うこともなく、仕入にも慎重になります。

好奇心が強く研究熱心である

好奇心はヒントやアイデアの源泉となるものですが、好奇心のある人は流行に敏感であり、同時に観察力にも優れています。それは、「どうしてそうなるのか、どうすればできるのか」を常に考える進取の気概に富み、チャレンジ精神が旺盛だからです。
昨日と今日の違いが認識できる観察能力は商いのヒントを顕在化させ、ノウハウ蓄積の情報として活用できる不可欠な素質です。商いは決して平凡で定型的なルーチンワーク(日常業務)ではないのです。
また、おもいッきりテレビやためしてガッテン、地方情報番組のひろしま満点ママなどで紹介された商品、お店がその後に人気化した例は数多く、これらのニュースや次週の予告内容は品揃えの参考にも利用できます。
できれば、放送テーマに合うような独自の商品、サービスがあれば、新聞やミニコミ紙などを含むマスコミ各社へ積極的な取材ロケの依頼をお奨めします。

自己管理ができる

自己管理には、時間や金銭の公私のケジメ、自己啓発、心身の健康管理が含まれます。日常的な指示、命令に慣れたサラリーマンは目前の仕事が一段落すると、つい気を抜いてしまうものです。経営者になると誰も指示命令しないわけですから、これらの自己管理は極めて重要です。
そのため、お客様のご要望やご意見、苦情などを指示命令と素直に受け取る気持ちが大切です。自己を変革するには、強固な意思と厳しい環境条件が揃ってこそ、可能となるもので、容易なことではありません。
お客様との約束は究極的に自分自身との約束でもあるのです。自分を信用できない人はお客様に信用されるはずがありません。約束事に大小優劣はなく、これらを厳守する積み重ねこそが信頼を得る唯一の方法です。

衣食住や娯楽に執着心がない

創業時から、これらのいずれかに執着心のある人はお金が貯まりません。これらは生活費なので、利益の範囲内で幾ら注ぎ込んでも事業にはプラスにならず、むしろ運転資金が不足し、黒字倒産の懸念があります。
反面、あまり自制するのも良くありません。我慢が過ぎれば、ストレスの根源となって精神衛生上によくないからです。”色即是空”の境地が望ましいのですが、最低限の生活環境で気にならない位が丁度よいのです。

商人道の考え方

商売を継続するには、自己管理と強い信念が求められます。そのため、身近に自分の心に留め置き、戒めや励ましとする格言や遺訓などを「座右の銘」とする経営者も少なくありません。座右の銘にしたい名言集に数多くの名言が掲載されています。
山本五十六語録の「やってみせ、言って聞かせて、させて見せ、褒めてやらねば、人は動かじ」や「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」、「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」などの名言は有名です。
また、生きる厳しさと男の美学を端的に表現した男の修行や日々の行動を自省する旧海軍兵学校の生徒指導用に利用された五省は時代を超越した格言として評価が高く、これらの色紙は呉市の大和ミュージアムなどの観光施設でも販売されています。

無財の七施

お布施はお経に対する謝礼や報酬ではなく、仏の教えを頂いた喜びや感謝を表意します。これらは金品等の財施に限らず、無財の七施という有名な教えがあります。
商いの道は仏の道であると信心した多くの先人達もいます。この仏の教えはお客様を直接の対象としたものではないのですが、人間関係の根本原理が説かれています。

和顔施(わがんせ) 和やかな笑みを相手にみせる
眼施(がんせ) 敬愛を込めて優しい眼差しで接する
言施(ごんせ) 優しい敬愛の言葉をかける
心施(しんせ) 相手への思いやりを心にかける
身施(しんせ) 自分の体で勤労奉仕する
床座施(しょうざせ) 人に席(順番)を譲ってあげる
房舎施(ぼうしゃせ) 自分の家(お店)を人の為に役立てる

旧ニチイ創業者の故西端行雄氏が前身の洋品店ハトヤを大阪天神橋で昭和25年に開業し、真心でお客様のために尽くすことが商いの道と悟り、朝夕に社員が唱和していたと言われる経営理念があります。
「人の心の美しさを商いの道に生かし 只一筋にお客様の生活を守り、お客様の生活を豊かにすることを我が社の誇りと喜びとして日々の生活に精進致します」の言です。この一部を変更し、自社の経営理念に利用しているケースも見受けられます。このように店は自分の儲けのためでなく、お客様のためにあることを理解するべきなのです。
残念なことにいくら立派な理念や社是があっても社員が多くなるといつの間にか建前になるようです。経営者ご自身が率先して行動で示し、本音であることを日常的に社員の頭に刷り込む努力が不可欠です。

お客様との関係

お客様との望ましい関係は三つの段階を経た「あい」がキーワードになります。

  • 出逢い
    待ちの姿勢ではなく、ショー人として積極的に出会いの場や機会を求めます。自ら歩く広告塔と公言する広島市安佐南区の株式会社△□○の社長はご縁づくりの先駆者として知られています。
  • ふれ合い
    言葉のふれ合い、感情のふれ合い、心のふれ合いなどを通じて共通する価値観を発見し、共感します。出逢い後のフォローが特に大切です。事例として、メールやハガキを即日送ることが印象に残るようです。
  • 支え合い
  • お店の存在はお客様のお陰であると感謝し、お客様との共存共栄を図ります。お客様を大切にすることは、好印象を与えるのみならず、お客様のお知り合いにPRや推薦をする可能性が確実に高まることを意味します。

江戸しぐさ

江戸の商人が商売繁盛の具体的な知恵やノウハウを門外不出の口伝で伝承された作法を江戸しぐさと言われます。象徴的なしぐさとして有名な路地での肩引きや傘かしげ、詰めて座る際のこぶし腰浮かしなどは教育関係者にもよく知られており、このような人間関係を円滑にする言葉や身のこなし、商人としての生活哲学が主な内容となっています。
時代背景や考証などに疑念があるものの、江戸しぐさは商人の心得として互譲の心掛けや心配り、気遣い、思いやりなどの理念の大切さが説かれています。

商売戦術三十ヶ条

学問ではなく、現場で培われた洞察力を基に松下幸之助氏が全国の松下電器連盟店へ配布した昭和11年1月の経営資料に記した商売戦術三十ヶ条は経営の神様のメッセージとして現在も研修教材に利用されています。

鬼十則

日本最大の広告代理店である「電通」の吉田秀雄氏は昭和26年に「鬼十則」と呼ばれる電通社員の行動規範を提唱し、その後の社業発展に貢献したと言われていますが、労働環境を刷新するため、社員手帳から削除されました。

  1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
  2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
  3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
  4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
  5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…。
  6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
  7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
  8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
  9. 頭は常に全回転、八方に気を配って一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
  10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

時代背景が違うとは言え、GHQ占領下の当時は戦後の引き揚げ者や兵員の多くが暮らしに困窮し、職を失うことは食べることさえできない社会情勢の中、社員はこれらの厳しい行動を実践していたようです。

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